12時間目 株はボロ株を見ろ(前編)


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ある時、投資部キャプテンの神代から「株はボロ株を見ろ」と言われましたが、孝史は「良い株を探さないと儲からないじゃないですか」と反論しました。その時の神代の返した言葉は、「お前は金を掘りに行くヤツか」というものでした。少しわかりにくい神代の発言には2つの真相が秘められていました。その真相とは。

金を掘りに行くのでは儲からない

真相の1つは、“社会のブームを利用して稼ぐこと”の必要性を言っています。1848年頃に米国はゴールドラッシュで沸いていました。多くの資産家が誕生したと言われています。ただし、スコップを持って掘りに行った人間で金持ちになった人はいませんでした。彼らはブームに乗せられていて稼ぎに利用された人々です。一方、ゴールドラッシュで儲かったのは、スコップを作って売った人、宿や飲食を提供した人、発掘された金を運ぶ鉄道会社を創業し運営したような世の中の流れを先読みして宝の山にいち早く辿り着いてブームを利用した人々です。神代の発言の真意は、優良な株式ではなく、ボロ株の中からブームになるようなものを探し出せと孝史にアドバイスをしたのだと思われます。

誰がブームを作り上げたのか

さて、あなたはウィリアム・ヘンリー・ゲイツ三世という人をご存知でしょうか。ほとんどの方がピンとこないのではないかと思います。実はこの聞きなれない名前はマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏の本名です。このゲイツ氏は1994年から2006年までの13年連続で総資産世界ナンバーワンを達成し、2014、2015年と2年連続でナンバーワンの座に返り咲いた誰もが知る大富豪です。現在の総資産額は9兆5000億円とされています。

さて、アメリカの歴史上にはこの21世紀を代表する大富豪を総資産額で上回る人物がいました。諸説は色々とありますが、第1位はジョン・デイビットソン・ロックフェラー氏です。なんと資産総額は24兆円とされています。一族では総資産が200兆円を超えるとも言われ、まさに彼ら一族こそがThe石油王といって間違いないと思います。エクソン・モービル社の前身であるスタンダード石油を中心とした巨大企業群を統括し、まさに社会の成長ブームを追い風にぐんぐん業績をのばしていきました。今現在でも一族の高名は健在です。

第2位にはとコーネリアス・ヴァンダービルトです。鉄道、海運業として有名で、総資産が17兆円であったと言われています。一族は、鉄道業もさることながら汽船業でも力を産業革命時に発揮し財産を築きあげました。やはり、変革の時にうまく立ち振る舞い大きな流れを引き寄せました。

第3位のジョン・ジェイコブス・アスターは不動産業と毛皮業で14兆円、第4位のスティーブン・ジラードは海運業で10兆円と続きます。やはり、この2つの一族も各産業の黎明期から深く関わり大きく事業を拡大してきました。

この後に第5位にやっと現代のゲイツ氏が登場します。ゲイツ氏はIT化、デジタル化の流れを黎明期からアップル社の創業者スティーブ・ジョブスと共に支えた巨頭です。IBMとの交渉では大勝利を収め、その後マイクロソフト社は業績拡大、IBM社は業績縮小と大きく明暗を分け、確固たる地位を確立しました。

さて、このような歴史上の富豪の業種から明らかなように、鉄道、石油、運輸、そして一時期はほとんどのパソコンに標準装備されているソフト会社というように、社会のブームやインフラを牽引した企業が財を築きあげてきました

このような企業をボロ株の中から見つけ出すのは現実的には難しいところがあります。また、さほど世の中で革新は起こりにくいため、なかなかこのような企業が頭角をあらわすことも容易ではありません。それでも、後で振り返ると時代の変わり目はみえたりしますので、見逃さないようにアンテナを張り、投資に活かしたいものです。

次回、神代のもう一つの真意を読み解き、投資に直結した鉄則をご案内したいと思います。

今日の鉄則!
ブームを作る企業を探せ。ブームに便乗した会社の業績は一時的なもの。一方、大きなブームを作る企業は、長年に渡り業績は拡大、安定。
→ 歴史上は鉄道、石油、不動産王などが存在したが今はなかなか探しにくい。でも、同じような発想で、現代でも使える投資鉄則は存在する。