3時間目 身近なところに銘柄選択のヒントがゴロゴロ


「インベスターZ」credit.7 天才出現? より

投資部に入部した孝史は、初めての株式投資を行うことになりました。株式投資のルールを全く知らない孝史は、自分自身がハマっているゲーム会社に注目し投資を行うことを決断しました。銘柄はゲーチキ。

自分の知識の及ぶ範囲内で、身近な銘柄へ投資すること

今回の孝史の行動は、一見すると下調べのない無謀な投資のように見えますが、実は有名な相場格言に沿ったものでした。株式の初心者向けには「株式投資を始めるにあたっては、まずは身近な銘柄から」、「遠くのものは避けよ」、「乗りやすい馬を選べ」というのがあります。また、上級者向けには「相場のリズムが狂ったら身近な銘柄で立て直せ」などもあります。全ての格言が、あまり知らない、そして興味がない業界の株式に手を出すのは良くないということを教えてくれるありがたい格言です。

あなた自身の就職活動で考えてみてください。全く知らない、興味のない業界に就職活動しても、面接で良い結果が出るはずがありません。質問が来てもちんぷんかんぷんですよね。やはり身近で興味がある業界に面接に出向くべきです。

また、株式投資の初心者は、残念なことに株式投資に必要な財務分析や株価算定の知識をあまり持ち合わせていません。そこで、計算を使った定量的な分析はあまり出来ないとしても、数字では表せない定性的な分析を大切にして投資を行うべきです。自分自身の趣味や仕事、家族や友人の仕事、気になる流行りの店、ハマっている趣味なんでもいいのです。その会社は、どのようなビジネスモデルなのか、業界の慣習などをおおむね知っている企業であることが大事になります。そうすれば、その業界に関係あるニュースを聞いたときに、投資のヒントとして、銘柄を選ぶことに活かせるなど良い結果に近づけそうです。また、企業に悪いニュースを聞いたときは、その影響がどの程度のものなのか自分で十分に判断できそうですよね。

さて、実際にあなたの身近な企業で、ここ数年大きく上昇した株式を想像してみてください。実は相当数あります。例えば、目の悪い方だけにメガネを提供するだけではなく、パソコン利用者の目の疲れの悩みを解決したPCメガネ、花粉症の悩みを和らげた花粉症メガネなどを世に提供したメガネ会社のJINS。全国で讃岐うどんを身近な存在にした丸亀製麺。フィットネスクラブの年齢層を拡大したカーブス。未だに人気の拡大を続ける東京ディズニーランドのオリエンタルランドなど、皆様の生活にかなり密着した企業の株価が大きく上昇しています。

これらの企業はあなたに身近だからこそ、普通に生活をしていながら人気を感じることができるのです。例えば、ディズニーランドに行けば、入場者数が多くて人気のすごさを実感できますし、これからも人気も続きそうだと実感できるはずです。丸亀製麺も実際に訪れると、素晴らしく流れるようなオペレーションであるにもかかわらず、常に列をなすお客様を見て、流行っているなぁと思うはずです。

著名投資家ウォーレンバフェットも、やはり身近な銘柄に投資をしています。彼は、毎日欠かさずに4本のコカコーラを飲むそうです。彼がコカコーラの大株主であることはあまりに有名な話ですが、金融の世界では、彼が、食品メーカーの銘柄に多く投資をしているのは、実はこのような好みが関係しているのではないかと言われています。加えて、彼の名言をご案内すると「最も重要なのは、自分の能力の輪をどれだけ大きくするかではなく、その輪の境界をどこまで厳密に決められるかです」。つまり、自分の得意分野や興味のある分野を自分でしっかり把握し、得意分野を広げるよりも、判断できる範囲を定めておくことの重要性を説いています。
つまり、自分の体験できる範囲と判断できる範囲で投資をしているということでしょうか。

一方、この投資の極意を忘れたばかりに失敗した例も歴史上多く見られます。一番分かりやすい例は、2000年のITバブルではないでしょうか。あの当時を思い起こせば、ITの定義がそもそもはっきりしていない中、つまりITを自分の得意分野としていない人が少なかったのですが、なぜか多くのIT関連企業と名付けられた株が大きく上昇しました。つまり精通していない人が無策に株を買い漁ったということです。

当時の株価膨張は半端なものではありませんでした。 Windowsで有名なマイクロソフトの株式時価総額は、1999年に6000億ドル(約60兆円)を超え、当時としては最高の時価総額になりました。この時価総額は13年の歳月を経てやっと2012年8月にアップルに更新されましたが、難攻不落の記録となりました。ただ、このときのマイクロソフトを始めインテル、ヒューレットパッカードなどは巨額の利益を実現しており納得のできる時価総額でしたが、当時赤字企業であったアマゾンの時価総額が300億ドル(約3兆円)、AOL社のPERが700倍(歴史的なPERの平均は15-17倍)を超え、明らかに株価がバブルの様相でした。振り返ると多くの投資家はビジネスモデルなどを深く理解をせず投資をおこなっていた傾向が強かったです。やはり、命の次に大事と言われるお金です。自分のしっかりと理解のある企業や得意分野で投資を行うことでバブル崩壊をも回避できるという大事な教訓です。

ちなみにITバブルと名が付いているように、このバブルは短い命で終わりを迎え、その後ながらく深い傷跡を残しました。

今日の鉄則
身近な銘柄や熟知した業界に投資をしよう。

→世間でなになに銘柄が良いと聞いても、自分が理解できない会社には投資をしてはなりません。なぜなら、知らない企業の良いニュースも悪いニュースも判断できないのですから。