7時間目 株式投資に必勝法はあるのか?
孝史は投資部主将の圭介と雀卓を囲んでいました。その時、孝史は圭介から上昇しているゲーチキの株を今後どうするつもりかと聞かれました。孝史としては、ゲーチキ株はこれからますます上昇するという自信もあり、まだまだ保有し利益を広げていきたいと考えていると答えましたが、その考えを圭介は一喝。「株は法則でやれ」と決まりに従って売買することを指導しました。その一番初歩的な法則として「利食いと損切り」を教えてもらうのですが、この法則は本当に株式投資の必勝法なのでしょうか。
利食いと損切り
圭介は続けます。いかに利益を上げるか、いかに儲けるか、そして目標の利益を得るには、「「自分の一切の感情を捨て、自分の上に法則を置け。法則が神!」。圭介は、部員の蓮にその考え方に基づいた「利食いと損切り」を孝史に教えるように指示しました。
蓮は、利食い、損切りの通常のルールを次のように伝えました。利食い20%、損切り10%。つまり、株価を購入後に20%上昇したら売却、逆に10%下がったら売るといったものです。ただし、孝史の場合は、まだまだ初心者なので利食い10%、損切り5%をルールとして従うように指示しました。
さて、孝史はこのような指導を受けた後にもかかわらず、翌日以降この法則を守ることをせずに、自分の欲に負けて利食いを行わず、利益を失いそうになりました。まさにこの鉄則の大事さを証明した場面です。
初心者はまずは損切りを覚えること!
株式を売却する時、利食いと損切りの二つケースがあります。世の中の全ての人にとって、利食い(利益確定)が楽しく、損切り(損失確定)が悲しいのは間違いありません。だからこそ、投資家はその苦しみから逃げようとするのです。この間違えた行動を起こさないための第一歩は、株式投資は “損が出る” ものと割り切ることです。残念ながら、投資した株の上げ下げの確率は50%なので10回中に5回は下がるのです。それどころか、株式相場に人間の感情が入るため、予想や思惑と反対の方向に動く確率の方が高いといってもいいかもしれません。だからこそ、損が出た時は、くよくよ考えずに規則に従い “損を切る” ことが鉄則であるということを絶対に忘れないでください。しかも損切りは手早くです。
米国の伝説の投資家ジェシー・リバモアは損切りの大切さについて相場を通して学んだようです。「証券取引所では、大物相場師だって先のことは見当がつかない。並外れた成功を収めた者も、たいていは小口のトレーダーとして出発した。彼らが闇ブローカーから主に学んだことは、
損切りができなければ市場から去りゆくのみ」ということ」。
投資の上級者は、このように損切りが上手であると断言できます。しかも、そのような投資家は、損切りは利益を上げるための必要経費という考え方を持っており一切迷うことなく損切りを行います。それは、損切りをしない弊害をよく熟知しているからです。含み損を放置していると、損失の額によってはまともな思考を失い、相場観が狂い、そして最後には決して後戻りできないような大損失を抱えてしまうことを知っています。だからこそ、損失を受け入れることができるのです。
一方利食い(利益確定)はどうでしょうか?人間は利益が出ると間違いなく欲がでてきます。 “もっともっと儲かる” という気持ちはどんなに経験を積んだ投資家でも湧き上がるものです。だから、初心者には欲張りすぎないようにルールを自分で決める必要があります。それが利益価確定のルールです。
利食いを薦める「利食い千人力」という相場格言があります。含み益(実現していない利益)は本当の利益ではないということ、また、ある程度のところで利益を確定することは、千人の力を得たのと同じほど大事だという格言です。利益を確定すると冷静な思考に戻り、相場観が研ぎ澄まされ、次の投資戦略を考える余裕が出て次の投資も成功します。まさに好循環です。
損切りと利食いに加えて「損小利大」という鉄則も覚えてください。損は小さく、利益は大きくという意味です。今回、蓮は損切り5%、利食い10%というルールを孝史に授けました。これこそまさに「損小利大」の戦略です。
先にも書きましたが、相場は50%の確率で下がり、50%の確率で上がります。だから、下落は5%で損切し(5回で25%の損失)、上昇は10%(5回で50%の利益)で利食いすることで利益をきちっと積み上げることができるわけです。
さあ、利食いと損切りは最低限の必勝法です。自分の必勝法をいくつも身につけましょう。
利食い&損切りを徹底しよう。特に、損切りは株式市場で勝ち抜くには必要不可欠な投資鉄則です。損切りができないようではいつまで経っても投資の世界では小僧です。